人工知能AIブームの歴史
人工知能は「artificial intelligence」の英語の頭文字を取りAIと呼ばれています。
AIとは人間の脳が行っている知的な作業を、人工的に作られた知能を持つコンピュータが模倣し実行することを意味します。
最初のAIという言葉の誕生は1956年にダートマス会議でジョン・マッカーシーにより命名されました。
大学や研究室などアカデミックな世界で研究が進められてきました。
それから約60年後の2016年にはアメリカグーグル傘下のディープマインド社が開発した囲碁プログラム「アルファ碁」が世界トップレベルのプロ棋士を打ち負かし、一気に脚光を浴びました。
今では頻繁にテレビやニュース、新聞で取り上げられているAIですが、このAIのブームはいつからあるのでしょうか。
AIのブームは最近発生したばかりということではありません。
過去、数回にわたりAIの盛り上がりと終結の波を繰り返し、現在は第三次AIブームと呼ばれています。
(出典:人工知能の未来)
第一次AIブーム
年代 1950~60年代
背景:コンピュータができ始めた時
特徴:推論と探索(探索・迷路・パズル)に関するブーム
第一次ブームはコンピュータができ始めた1950~60年代です。
コンピュータの登場により人間を超えるようなAIが誕生すると期待され、次々と新しいアルゴリズムが考案されました。
第一次ブームの特徴として「推論と探索」があります。
「推論と探索」とはコンピュータがゲームやパズルを解いたり、迷路のゴールへの生き方を調べるなどの技術のことです。
第一次ブームの研究により生み出された新しいアルゴリズムにより、一見知的な活動を行えるようになりましたが、コンピュータの性能は低く、ルールとゴールが厳密に決まっている枠組のなかでしか動けないため、現実世界では全く役に立たないことが見えてきました。
その結果、第一次AIブームは終結してしまいます。これらの第一次ブームでの人工知能のことをトイプロブレム(おもちゃの問題)と呼ばれます。
コンピュータの性能の限界が見えたことから、1970年代に一回目の冬の時代に突入していきます。
第二次AIブーム
年代 1980年代
背景:家庭にコンピュータが普及
特徴:エキスパートシステム
問題点:複雑な問題・例外への対応が壁
1980年代に入り、家庭にコンピュータが普及したことにより第二次ブームが発生しました。
第二次AIブームの特徴として「エキスパートシステム」が挙げられます。
「エキスパートシステム」とは専門家の知識をコンピュータに教え込みことで現実の複雑な問題を人工知能に解かせることを試みたシステムです。
第一次ブームと比較してコンピューターの小型化・性能が高まっており、ある程度はこれらの試みは成功しましたが、知識を教え込む作業が非常に煩雑であること、例外処理や矛盾したルールに柔軟に対応することが出来ませんでした。
日常世界を見渡してみると、これらの例外処理や矛盾したルールは非常に多く、知識を教え込む作業が非常に困難なことから、第二次AIブームは自然に消滅へと向かってしまいました。
その後、1990年代半ばにWindows95の登場、インターネットの普及、検索エンジンの高性能化が進み、世界中にいる誰もが簡単に大量のデータを扱える時代に突入しました。
第三次AIブーム
年代 2000年代以降
背景 インターネット/クラウドの普及
特徴:コンピュータの字自主学習の確立
第二次AIブームでのエキスパートシステムが壁にぶつかった問題として、日常世界には例外処理や矛盾したルールが非常に多く、知識を教え込む作業が非常に困難というのがありました。
これはコンピュータはプログラムと呼ばれるあらかじめINPUTされた命令を順次行っていくため、INPUTされていない例外処理や、矛盾したルールにぶち当たった場合に柔軟に対応出来なかったためです。
これらを解決する手段として「機械学習」や「ディープラーニング」にてコンピュータが自らが学んでいくという手法が第二次AIブームの時代から研究されていましたが、実用化するためにはコンピュータの性能が追い付いていませんでした。
しかし、2000年代に入り、コンピューターの小型化・性能向上に加えインターネットの普及、クラウドでの膨大なデータ管理が容易となったことで実現可能なレベルとなり、第三次AIブームが沸き起こりました。
第三次AIブームでの主な出来事
- 1997年:チェス専用のコンピューターが世界王者に勝利
- 2006年:ディープラーニングの実用方法が登場
- 2011年:IBMワトソンがクイズ番組で人間に勝利する
- 2012年:画像認識の向上で画像データから「猫」を特定できるようになる
- 2016年:「アルファ碁」がプロ棋士に勝利を収める
2016年はディープラーニングを起爆剤としたAIが社会に衝撃を与え急速に発達した年であると言われています。
次の年の2017年が実用的なシステムも世の中に登場し始めてきており「AI元年」と呼ばれています。
このようにAIブームは1950年代の第一次AIブーム、1980年代の第二次AIブームと盛り上がっては衰退していきましたが、数々の実用的なシステムの登場により第三次AIブームは継続して続いていくだろうと予想されています。